それは果たして愛すべき対象となり得るのか……

 西暦200X年、復刻シリーズにより爆発的なブームとなったタカラの『ミクロマン』の勢いは留まるところを知らない。前世紀の旧製品は「オリジナル」と称され、そのプレミアが天井知らずに高騰する一方で、新規商品すらも店頭に並んだ瞬間に完売するほどの加熱ぶりを見せている。テレビ東京系列でスタートした新作アニメーションは記録的な視聴率を更新し続け、ブームに便乗する形で様々なメーカーがライセンシー供与を受けミクロマン商品を発売し、親子2世代に及ぶ商品セールスはもはや玩具流通のみならず、日本経済の一つの核となっていた。そんな中、もはや夏の定番と言えるほどの巨大マーケットにまで成長したミクロマンのイベント『ミクロコンジャパン』が今年も東京ドームで行われる……
 そんなことになってたら、幸せだったんでしょうか、果たして。

 そんなわけで、前フリとはあんまり関係なく作ってみたのがコレ。実を言うとこのメディコムトイの『キューブリック』というのがどうにもこうにも馴染めなくて愛せなくて、はっきり言ってこれまでまったく無視してたんだが、ここへ来てどうにも気になるモノが現れた。それが『BASIC』と呼ばれる単色キューブリックの5体セット。半分くらいはカスタマイズされることを前提に販売されているこの「素体」に、ニセモノ好きの血が沸騰しちゃったのである。そして「あんまり好きでもないモノでも自分好みの意匠を加えたら好きになれるのか?」という疑問に自ら答を出してみようとしたのだった。

 確か前回でミクロマンとは決別したような気もするが、もちろん本音とタテマエは別のところに存在するのが人情だ。単色のキューブリックを見て「何にしたら良かんべか」と色々考えた挙げ句、まず「そんなに付属品とか付けずに再現できる意匠」としてミクロマンを選択した裏事情もあったりしつつ。
 ちゅーかあくまでも『キューブリック』としてのレギュレーションに拠るつもりだったんだが、ブルース・リーのは頭が造形になってるし、ブレストももしかしたら立体の方がいいのかもしれんしで、なんかそのへんの曖昧さがイマイチ乗り切れない理由なのかもしれんね。今回はなんとなく「ミクロマンのイベントで無償配付されたモノ」という架空設定にして、あんまり金型代とか使わない感じのデザインにしてみた。なんじゃそれ。

 で、調べてみると『東京おもちゃショー』で配付されたキューブリックがクリアカラーらしいので、本来はタダであるものをプレ値で購入してベースにした。「カツラ」の部分は自作しようとも思ったんだが、アリモノ使った方がリアルだろうと『SPECIAL FORCE 2』というシリーズの「POLICE(A)」の頭パーツを使用。この商品も中身の選べないシークレットボックス仕様なので、このカツラを得るためだけに転売市場で購入してる。もう何か見失ってるぞ。

 制作に関しては例によっていつもの感じ(笑)だが、ケースをキャラコンとかのイベントで配付される際のビニルケースにしたいってところで、そっちにも使えるようにプリントにはデカールでなく透明なタックフィルムを使用。メタルックを貼ってメッキ風にした頭や本体のブレスト部分のプリントにもこれを使っている。足首の部分はベースホワイトで塗装。ケースには市販の名刺サイズのビニルケースにカプセル風の意匠を描き込み、中に入ってるカードにもカプセルのパターンを描いて「疑似カプセル」風にしてみた。例によってこのへん全部illustratorを使用。ロゴとかトレスしてると「ああメディコムのロゴはFuturaEXboldなのか」と発見も多い。空しい。

 で、本来の目的である『BASIC』のパーツは白い手首しか使用してなかったと。そんなオチ。

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