ARCHIVED UPDATED : 2014.07.09

木乃伊取り

唐突に旧ケナー出して来ましたけども、なんか違和感ありますよね。ありませんか?実はこの2体、胴体に貼ってあるステッカーがレプリカ、模造品なんですよ。

なにしろステッカーは紙ですから、当時から残っているものの大半は汚れや傷、紙自体の変質などで劣化しているので、お手軽な修復法としてこのテの模造ステッカーに貼り直された個体が多く見られます。欧州の方が盛んな印象ありますかね、個人の感想ですが。

オレ自身もそうやって修復されたジャンク品や、eBayなんかで出品されてる模造ステッカーを入手したことがあるんですが、ただ、このテのステッカーというのが、どうにもこうにも気に入らないんですよ。
基本は家庭用のインクジェットプリンタで、どこにでも売ってるラベル用紙に印刷してあるもので、そのへんに転がってるPDFデータやスキャン画像をそのまま版下にしたのか全てのラインが網点で構成されてたりとか、質感はおろか精度なんてあったもんじゃないレベルだったり。少しマシなモノでは高精度のレーザープリンタでそれなりに当時モノに近い用紙に刷ってるのもあるんですが、余計なことにわざわざイラストレーターとかでカッチリした図案に修正しちゃってて、質は良いのに雰囲気が台無しだったりして。

本物は当然デザイナーが必死こいて手描きで版下を起こしてるわけで、実際によく見てみるとロットリングのインクの染みだとか線幅の揃ってないところが多々見受けられて、あぁがんばってるけど限界だったんだなぁ、みたいな感慨もあるんですが、そういう情緒がまるでない。というかそんなものを再現するつもりがさらさらない。

かつてナチュラルボーンライヤーと自称していたオレにとって、そういう不満が積もりに積もった結果、

自作しました。

とにもかくにも「当時のステッカーと見まごうばかりの模造品」があればいいわけで、あったらいいなぁと口をポカンと開けて待ってるのもアホらしいですし、自分で出来る範囲でなんとかしてみましたよ。

とりあえずダメージの少ないステッカーを入手するために未開封のビンテージ品を手に入れ、泣く泣く開封してしばらく愛でた後、薬剤を用いて剥がしたステッカーを可能な限り高解像度でスキャンしたものを、更にイラストレーターでインクのにじみや印刷の掠れなんかも再現すべく手作業でトレースし、最終的にラベル専門の業者さんに頼んで印刷してもらう、という行程を経て完成したのがこれ。仕事の合間にやってたんで結局完成までに半年もかかっちゃいましたが、それでも入稿ギリギリまで「あとコンマ05ミリ細く」とかやってて、まさに執念の結晶。

実際に当時のジャンク品に貼ってみるとこうなりました。ちなみにこの個体は一番最初のアーリーバード版なので、厳密に言うとステッカーの細部が微妙に異なっているはずなんですが、まぁパッと見には分からない感じなんじゃないでしょうか。

今回は「あくまでもテスト」というつもりで始めたので、業者刷りといっても所詮はオンデマンド印刷だったりして、拡大鏡で見ればラスタライズのジャギーとか、意図してない版ずれなんかもあって満足度的には70%といったところですかね。他の成型部分との統一感を出すために、どうやって「古び」を出せばいいかも実験してみたいところ。本番ではそのあたりも含めて完璧に仕上げたいと思います。いつになるか分かりませんが。

なんでオレがこんなにステッカー再現に燃えるかというとですね、旧ケナー原理主義の方には猛烈に批判されそうですけども、オレはこの旧ケナーのR2-D2が大っ嫌いなんですよ。いや、嫌いとまでは言い切れないかな、アートゥだから。でもまぁ決して好きではない。だってこの顔ですよ、なんですかこれ、この丸い目玉? 成型の技術的な問題にしても、タカラはもっときちんと再現できてましたよ。そんでもってこのステッカーですよ。手抜きすぎでしょ、どう見ても。原理主義者の人は「いやこのヌルさが良いのだ」なんて言うんでしょうけど、確かに今でこそ味は出てるかもしれませんが、オレはこれ本気で許せなかったんですよ、中学1年の時から。

そんなわけで「今さらこんなもの高いカネ出して揃えることはない」という思いから、未開封の旧ケナーものなんてほとんど持ってなくて、ウチにあるのは基本むき出しのジャンク品ばかりなんですが、それでもやっぱりステッカーが痛んでたり剥がれちゃってるのは不憫なので、できることなら直してあげたかった次第でして。まぁ許せないはずのステッカーと、ここまで真剣に向き合うことになるとは思いませんでしたけどもね。

※ステッカーは個人使用の目的で製作したもので、有償・無償に関わらず頒布はいたしておりません。申し訳ございません。
I'm sorry, these stickers are not for sale.

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