Changerion's design transition

意外な展開?
シャンゼリオンの誕生秘話part2


いよいよここからは、初公開となる「マスカレイザー」時のデザイン画が登場。
ホントにこんなの見せていいのか?と自問するばかりだが、とりあえず超百科出ないしー。まぁいっかぁってカンジで公開に踏み切ることにする。
東映からクレームが来なかったのはひと安心だけど、超百科はおろかロクな資料本が出なかったのは残念ざんす。最終回近辺の闇生物のスチルとか見たことないものよ。


Maskaraiser-1
LIGHTNING ROLE(super hero form)

ガンダム+ウルトラマン=・・・?

 『マスカレイザー』の企画書によると、マスカレイザーは七変化ヒーローであり、要するに一人の主人公が複数のタイプに臨機応変に変身するというレインボーマンみたいなヤツだったのである。役割別に形態を変化させ、それを引っ括めてROLE(ロール)と呼ぶという、実は「変身」から少しバージョンアップしたタームが盛り込まれていたのだった。そして銃を撃つだけの形態や剣技だけの形態なんてのが想定されていて、その中でも「必殺技に特化した形態」としてデザインされたのが、この『LIGHTNING ROLE(オレ仮称)』。つまり戦いの最後の最後にだけ登場し、必殺技を放ってキメるだけの存在という、水戸黄門の印ろうに手足が生えたようなものなのである。

 そもそも「透明素材を用いた撮影用スーツを作っても、それでアクションするのは無理」ということは最初から分かっていた。この透明表現というのは、外側のいわゆる外見的な型と、内側の透けて見える型との間に透明素材を流し込み、内側にのみ塗装ないしはメッキ加工することで再現しようとしていた。つまりムクの樹脂の塊を全身に付けるわけで、それが動けるモノになるとは誰も思っていなかったのだ。(実際には動いちゃったんだが。)

 もちろん企画が実現していたら「ほとんど登場しないヒーロー」を主人公として認知させるのには骨を折っただろうと想像するが、それでも「動かなくてもイイよ」という安心感から、デザインはかなり制約を逃れさせてもらっている。
 実際のデザインにおいては、変身サイボーグの呪縛から頭にあった「中身はメカ」というこだわりが、メカを前面に押し出した別形態が存在することから希薄になり、どちらかというとファンタジー風の要素でまとめようとしていた。それと同時に「東映には仮面ライダーがあるから、あとは
ウルトラマンとガンダムがあれば怖いものはない」という、かなり子供じみていながら実現できればそれはそれでスゴイと真剣に思う理想のもと、その2つのイメージをなんとなく加えたりもしている。相変わらず着想から実現へ至る過程がストレートすぎて泣けてくるが、「ガンプラ世代のウルトラマン」みたいなところに落とし込めれば、って言うと聞こえはいいだろう。透明素材の内側には2種類の筋肉のモールドを入れて、それがウルトラマン風の模様に見えるようなイメージである。漠然としてるが、まぁそんなものだ。『宇宙船』なんかで語った「天使の衣を纏った鬼」というイメージは、このへんに基因している。

 実はこの絵以前にもう1つ別案があって、それは分かりやすく例えると『まりんとメラン』のメランみたいな、いわゆる逆三角形アタマのものだった。このデザインは「仮面ライダーから受け継がれる伝統として、ヒーローの頭は丸くなければダメだ」という『貴方トクする私トクする』の人の意見により簡単に一蹴されてしまったのだが、その際の「三角形の両端を顔幅の線で分断した断面を羽に見立てる」シルエットは、最終的なシャンゼのデザインにもかろうじて残ってるなぁ。

Maskaraiser-2 Maskaraiser-3
SNIPER ROLE(android form)HEAVY ARM ROLE(robot form)

東映お得意路線

 何種類かの形態を考えると、どうしてもシルエット的な拠り所と、素材的なものの変化で区別していかざるを得ないところがあって、その必然として考えられるバリエーションの「メカニックヒーロー風」ちゅーか宇宙刑事的なヤツと戦隊ロボ的なのがこの2つになる。どちらもFRPやレザー貼りのウレタン素材で作ることを想定した、硬めのシルエットを持つ形態である。

 青い方は射撃専用の形態として考えられた宇宙刑事タイプ。最初のラフではモロにコンバットスーツ風だったんだが、もちろんそれだと本家にも顔向けできなくなりそうだということで、ハードボイルド風、ないしはミリタリー風のアレンジを加えてこの絵になった。コートの裾みたいなレザー部分を含めて、黒く見えてるところが、だいたい後付け。「ドラえもんのポケットみたいに裾から次々と武器を取り出したりしたら面白いかも」と思っていた。ちなみに企画案が変更され、宙に浮いたこのデザインは、後にクラウドで手がけたプレステ用ゲーム『PAL』のキャラクターの一人として再登場させた。このゲームも東映がやってるから、別にいいのだ。

 黄色い方は見たまんまのパワータイプ。顔が(最終的な)ホウジンキに似てるってことで、セガ案とどっちが先だったか前バージョンでは話題になってたんだが、こっちのが先だったよ。安心。この時点ではあくまでも「力技だけの形態」ってことで、重火器を使用したりとかいうのは想定していない。肩に見えるガンキャノンの大砲みたいなのは、そんなわけでただの煙突だ。このへんも含めて、けっこう『エイリアン2』のパワーローダーを意識してることも分かる。いや、ソルドーザーじゃなくてね。

Maskaraiser-4 Maskaraiser-5
BIO NINJA ROLE(arien form)WIZARD ROLE(fairy form)

女に変身はないだろう

 一見してアマゾンライダーっぽく見える緑色のヤツは、剣殺陣をフィーチャーした忍者形態。もちろんフォームラバー造形の真ライダーみたいなのを期待したいところだが、(当時は)長期間使用するスーツだとキビしいだろうってところで、タイツ地にウレタンやレザーを貼って表現する方法を考えていた。色味からも一目瞭然だが、このイメージは最終的に『ザ・ブレイダー』となって落ち着くことになる。おう、そうだったのか。そうだったのよ。
 このテのキャラクター(最近で言うと『仮面ライダーアギト』のギルス)は、オトナの意見はともかく、いかんせん子供に人気が出ないという既製事実があるので、逆に「どうやったら子供にアピールできるだろう」というところに随分悩んだ。その結果が本来はメイン主人公の武器となるはずの「剣」の使用や、全盛期の大葉健二氏のようなすばしっこくてコミカルでキレのいいアクションを想定した動きやすさや、極端に丸くて大きめの瞳を持つカワイイ感じの顔なんかに現れている。
うさ耳のような頭部の突起も、内部にメカを仕込んだり、アップでギニョールを使うといった手法で動かすことを考えていて、頭部全体で表情を出そうというモクロミだった。
 ちなみにそれだけ考慮したにも関わらず、提出した際におもむろに嫌悪された憶えがある。全然ダメっすか。

 そして問題なのが赤い『WIZARD ROLE』。そう、WIZARDだからコイツもやっぱりオトコ、つまり主人公の変身の一形態なんである。吉川進Pの「どうしても妖艶な女の形態が必要」という意見ありきのもので、純然たる「変身ヒーロー」を想定してたオレとしてはかなり面喰らいもしたんだが、オンエアされたシャンゼのテイストとしては、実はそういうバラエティっぽいココロザシの方がより近かったんではないかと、今さらながら思ったりもする。女装アリだったわけだし。
 「レザースーツにムチ」というのも定番だが、このへんは「両方トクする」人から空山基センセイの画集『ガイノイド』を見せられて「こーゆーのがイイねぇ、こーゆーのをやれよ」と言われたところに端を発している。ちっとも表現できてない気もするが、さすがに「そのまんま」出すわけにもいかんじゃないですか。ねぇ。とりあえず「服に穴が空いてて、そこから人肌が見えるというのはエッチじゃなかろうか、それがたとえ肌色タイツであっても」という、後の『エリーザ』で用いるアイデアから全体を構成している。
 露出してる顔が造形の面なのか人間の素面なのかを想定してなかったり、各形態共通のパーツである胸のCDカバーを何も考えずに同じ位置に付けてあるために「胸に半球3個」というとてつもなく変な感じになってたりして、「とりあえず」感もかなり強い。ちゅーか少なくともこの形態は絶対に途中で無くなるだろうと踏んでいた。
 結果的にはここで出したもの全てが無くなってしまうのだが。


いよいよ次は最終章。心して読め!


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