なかのひと

ripkenyw
ラルフ・マクォーリーが描いた初期コンセプトアートのR2-D2と、劇中に登場したプロップとの最大の相違点は、そのプロポーションにある。

当初ジョージ・ルーカスは『サイレント・ランニング』のドローンに影響されて、R2-D2を「下肢欠損者にフィットしたスーツ」で再現しようとしていた。ボディをドローンのような大きい箱型ではなく、アクターの胴体幅を直径とした筒型に抑えることで、よりコンパクトで、なおかつ「腕で歩く」という奇抜さを明確にする狙いだったのだろう。
それを踏まえてコンセプトアートを見てみると、寸詰まりなボディに太い腕というか脚の描き出すシルエットには、確かにヒトの上半身部分を捉えることができる。このデザインを基にしたドロイドC1-10Pが、欠損者の意もある「チョッパー」と呼ばれるのは、ちょっと因縁めいてる。

ところが早々にこのアイデアは却下された。イギリスに拠点を構えたため、アテにしていた下肢欠損者の都合がつかなかったからだという説もあるし、そもそも当初のプランで重さや運動性といった現実的な問題をクリアできたかどうかにも疑問がある。ともあれそこで「中の人」として白羽の矢が立ったのが、ミゼットボードビリアンのケニー・ベイカーだった。

ここからR2-D2のデザインは、ケニー・ベイカーに合わせて大きく様変わりすることになる。基本的な構造はそのまま、胴体が延長され、腕は厚みの薄いダミーとなった。想定になかった脚のために例のぶっといホースをスーツタイプのプロップに追加せざるをえなかったのはご愛敬だが、自重を支える補助として機能するはずだった中央脚を収納式にしたことで、特徴的でより安定感のある「3本脚」形態への変形というアイデアが生まれた。
こうしてできあがったのが、皆がよく知っているR2-D2の形だ。

だからたとえ後年はほとんど演じる機会がなかったにしても、R2-D2の中にはずっとケニー・ベイカーの姿が入ってるんですよ。これまでも、これからも。