アナザーダブルのこと

『〜平成ジェネレーションズFOREVER』が無料公開された余波か巷でアナザーダブルが話題になってると小耳に挟みまして、自分にとっても非常に思い出深いキャラクターなので便乗してちょっと語ります。ただしデザインの意図や込められた真意なんてものには触れませんので念のため。

公式読本や『完全超悪』の中でアナザーダブルをデザインした際に故・韮沢靖さんと語り合うようなかたちで作り上げたということを述懐してまして、確かに最初「あしゅらみたいにしようぜー」という言葉が聞こえて「えっ」と後ろを振り返ったのは本当で今でもその声をはっきり思い出せるくらいなんですが、もちろん何か霊的なものが降りて来た⋯⋯わけではないのでしょう、たぶん。オカルトめいた言い方をしたのは短い文章の中で効率よく伝えるのに最適だったからで、ぶっちゃけ幽霊とかで出られても気持ち悪いしうっかり屁もこけねえから勝手に人の部屋入って来んなよぐらいに思いますしね。いや、ごめん、もし俺の後ろにニラサワさんいたらごめん。
ただその声に対して自分の考えを言葉にして応えるというのを繰り返していく中でデザインが出来上がったというのは他に言いようがない事実で、もしかしたら一種のトランス状態だったのかもしれません。むー、それでもまたオカルトっぽいから「内なる韮沢靖との対話」ぐらいにしておきましょう。対話というか、自分で手を動かさないもんだから言いたい放題まくしたて放題の「内なる韮沢」さんに対して「いやちょい待って。こう?こんな感じ?」みたいに着いていくのがやっとだったんですが。

一番最初に描いたラフスケッチ。ほぼほぼニラサワ独走状態。

ちゃんと拾えているか自信がなくなり、このあたりまで描いたところで「一旦落ち着きましょう、さすがにグロすぎませんかこれ。だいたい断面どうします? あしゅらと同じ? ああ、分かります南村喬之さんのイラストですよね、ってダメですよ内臓とか。顔が二つあるのはいいとして、頭部はやっぱり一つにして構成を変えましょう」と反撃に出て、最終的なアナザーダブルの姿に近付けていったわけです。もちろんその間も「ミイラだから全体にエジプト風味」とか「緑色(サイクロン)の方は青銅に付いた赤錆が血っぽく見える」とかいう注文に逐次応えてるんですけども。
結局は俺印のものになってるといえばそうかもしれませんが、自分一人の考えだけではこうはならなかったろうと思いますし、やっぱり合作したという気分がしっくり来るんですよね。

色も指定されたからラフなのに彩色までせざるを得なくなったりしつつ提出データが出来上がって「こんな感じでいいですかね?」と尋ねたら、しばらく間があって「ごめん、やっぱり左手を吊ってるの入れられない?」と言ってきたのでぴしゃりと「ダメです」と返したら、それっきり声は聞こえなくなったのでした。今にして思うと、意外とそこが拘りポイントだったのかなぁ。すみません⋯⋯。